幹部のバトンが8期へ
早稲田雪合戦の会では例年9〜10月頃に3年生から2年生へ幹部代を移行する。2016年9月中旬、ぼくたち8期は幹部代となった。
存亡の危機を脱し、ぼくたち8期の最初のミッションは練習環境の整備だった。
これまではサークル内にたまたま杉並区民2人居たため杉並区の体育館で練習を行なっていた。杉並区の体育館は区民個人単位で事前抽選に申し込むことが可能で毎月2人分を上限まで申し込んでいた。
しかし都内の体育館の予約争いは激戦であり事前抽選の倍率は10倍を超えることがほとんどだ。当然2人分の申し込みでは中々当選しない。そのため練習の頻度は月1〜2回となってしまう。
「練習をしたいのにできない」
高校までの部活動がいかに恵まれていたのかを痛感させられた。
雪合戦はお断りさせて頂きます
ならばと新たな練習拠点を必死に探した。
大学を当たってみるも、サークルなどに体育館を貸してくれる訳もない。
大学のある新宿区は区内在住者による団体にしか体育館を貸し出していないと断られた。
他の区を当たるも新宿区同様、在住者による団体にしか体育館を貸し出していないと門前払いだった。
江東区は区外の人間も空いていれば予約可能だったが、料金は3時間で1万円以上、数回練習しただけで早稲田雪合戦の会は財政破綻してしまう。利用は到底不可能であった。
やっとの思いで池袋でNPO法人が運営する体育館を見つけた。話を聞きに伺うと1度団体登録を行えば区外の団体でも利用可能で料金も2時間で3000円程度と館長さんが教えて下さった。藁にもすがる思いで必要な申請書類を準備し申請を行った。「これで練習場所を確保できた」と胸を撫で下ろした。
数日後館長さんから電話が入った。「役員会にてスポーツ雪合戦は体育館が破壊される懸念があるため貸し出すことはできないと決定されました。今回は残念だけど君たちに体育館を貸し出すことはできない。」と丁重にお断りを受けた。希望の光が見えた分、ショックも大きかった。
結局ぼくたちは今までと変わらず杉並区の体育館を月1〜2回利用する他無かった。
気合があればなんでもできる
「ぼくらの代でも練習環境は整備できないのか」と諦めかけていた。
そんなある時、杉並区の予約システム"さざんかねっと"を眺めていると事前抽選で押さえられていた予約枠がキャンセルされているのを発見した。
隅々まで確認すると案外キャンセルが発生していた。キャンセルされた予約枠は翌々日の朝8時30分から区外の人間でも予約が可能だった。
「ここを狙うしかない」
それ以来暇さえあれば杉並区の予約システムと睨めっこしてキャンセルを捜索し、見つければ翌々朝8時30分前にはパソコンの前に張り付き、時計の針が8時30分を指すと同時にクリック戦争へ参戦するという生活が始まった。
時には彼女とのディズニーランドデート中にスプラッシュマウンテンのファストパスを代償に予約を行った。彼女の白い目は今も脳裏に焼き付いている。
この方法を確立し、なんとか週1〜2回のペースで練習を行うことができるようになった。
以来早稲田雪合戦の会幹部には早起きもしくは徹夜が求められるようになった。そして鬼がフジの花を嫌がるように"さざんか"を拒絶するようになった。
(つづく)